小話 (坊っちゃん 5)

小話

 

牧野の身体からすべて余計なものを取り去ると、
不安げな目で俺を見つめる。

本当にここで?

そんな風に言っているようなその目を見つめ、
「なんなら、シーツだけ巻いて俺の部屋までいくか?」

そう意地悪く聞いてやると、
「しないっていう選択はないのかい…」
と、拗ねたように言うこいつが凶悪に可愛くて、

もうこれ以上待てそうにない。

指で充分に解した後、牧野の身体へとゆっくり挿れていく。
その快感に思わず声が漏れそうになる。

牧野も同様、漏れそうな声を必死に隠すように自分の手で口元を押さえている。
俺は、どうせするなら…と、その手をどかせ俺の唇で塞いでやった。

俺の動きとシンクロするように揺れる牧野の身体。
スーツの上着を下に敷いただけの硬い床。

俺は動きを一旦止めて、繋がったまま牧野を抱き上げる。
ベッドを背に座る俺の上に、またがるような体勢になった牧野は、肩まである髪が白い肌に流れ落ち色っぽい。

「道明寺?」

「この体勢でしようぜ。」

「えっ、……ダメ……。」

座ったまま牧野が上の状態に、いつも以上にテンパるこいつ。

「ダメじゃねぇ。」

「でもっ、」

「床、硬いだろ。おまえの背中痛めるから、この体勢なら大丈夫だ。」

「……。」

「牧野、動いて。」

「…道明寺ぃ……んっ……」

「……ヤバい……。」

それからは、マジで声を殺すのに必死だった俺。

 

 

その後、ゆうに30分を超えて、東部屋にたどり着いた俺たち。

部屋の前にはなぜかタマが立っていて、
呆れた顔で俺を見て言う。

「どこでどう寄り道したらこんなに時間がかかるんでしょうね坊っちゃん。」

「まぁ、…そのぉ、仲直りの散歩だよ。」

「まったく。
喧嘩の仲裁に入ろうと思って今日はつくしを呼び出したのに、タマは用無しってことですね。」

俺と牧野をにらみつけるタマに、
「いやっ、それはっ、」と、牧野が慌ててやがる。

「いいんですよ。坊っちゃんとつくしが仲良くしてくれるのが1番。
夕食が出来てるから、二人でダイニングに来てくださいな。
ひかるさんも一緒で構わないですよね?」

俺は隣に立つ牧野の顔を見て、タマに答える。

「ああ。
ひかるにも牧野を正式に紹介したいからな。」

 

 

「ねー、道明寺。」

「ん?」

「あのさ、……」

「なんだよ。」

ダイニングに行く前に、クローゼットに入ってラフな服に着替え中の俺に、視線をそらしながら牧野が言う。

「いや、別にたいしたことじゃないんだけど」

「おー、」

「さっき、ひかるさんが言ってた言葉。」

そこまで言って何も言わないこいつ。

俺は着替えを終えて、そんな牧野の前に立つ。

「牧野?言えよ。」

「さっき、……ひかるさんのファーストキスが道明寺だったって」

「あーそれか。」

思わず笑っちまった俺に、
「それかって……あたしにとっては結構重要で」
と、小さく呟く牧野。

そんなこいつが可愛くて、頭をガシガシ撫でながら教えてやる。

「ひかるが言うファーストキスってやつは、こういうやつで、ほっぺにチュって子供がするあれだ。」
そう言って、牧野の頬にもチュとキスをする。

「俺が4歳の時、俺のバースデーパーティーであいつがした。それを今でも時々言いやがる。」

「…そっか。」

「そして、ここからが重要。
俺にとってのファーストキスっつーのは、
こういうやつで、愛してる女に愛してるって想いをありったけ伝えるキス。
覚えてるよな?ちゃんと。」

そう言いながら牧野に、初めてした時と同じキスをする。

「飯、食いに行くか?それともこのまま…」

「ご飯食べに行こうっ!」

「少しは迷えよ。」

「急がないと、またタマさんに怒られちゃう!」

 

 

相変わらず、おまえといるとドタバタだけど、
それが俺の至福の時間。

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